休日は朝が遅い。
家族一斉に起きる平日とは違い、起きる者から起きてくる。
その日の一番乗りは夫。なぜか6時に目が覚めた夫は、ようやく訪れた冬らしさに背中を丸めながら、足音をさせないように、リビングに下りた。「はてなブログ」がバズった夢を見たから、現実かどうか確かめようと思ったことも理由の一つだ。
冷蔵庫から水を取り出し、コップに注ぎ、ごくり。
昨夜自ら作ったカレーを温めた。
一人の朝。「こんな朝はインド音楽かな。でも、インド音楽はあまり知らないから、ビートルズのリボルバーにしようかな」といったんは思ったが、考えを改めた。
「もし次に子どもが起きてきたら、リボルバーは嫌がるはず。そうだ、久石譲の『ENCORE』だ。名曲のピアノアレンジが朝にぴったり。ジブリも入っているし、子どもの心もつかめるはずだ」
そう考え、オーディオセットにCDをセットした。1曲目は北野映画の主題歌「Summer」。久石メロディーと甘口カレーのコンビネーションは絶妙だ。
6曲目「6番目の駅」(千と千尋の神隠し)が始まったころ、足音が聞こえてきた。
むすこだ。
「むすこは『千と千尋』を見たことなかったな」と反応をうかがっていると、むすこは迷いなく、テレビを付けた。
画面は「スマーフ」を映した。
「これが見たいから起きてきたんだよ。音楽消してよ」
むすこは容赦ない。
「え、もうテレビ見るの?」と尋ねると、「英語で見るんだからいいでしょ?」とむすこ。
我が家では「英語の音声」に弱い。小さいうちからできるだけ自然な形で英語に慣れさせたいからだ。
夫はぐうの音も出ず、チャンネル権をむすこに譲り渡した。
「スマーフ」が終わると、さらに大好きな「おさるのジョージ」。
もちろん音声は英語。
むすこは自分で「シスコーン」を皿につぎ、「サクサク」とおいしそうな音を立てながら食べ、ジョージを見ながら大笑いしていた。
夫は甘口カレーに一味唐辛子を振りかけた。
ブログがバズった夢は夢でしかなく、早朝の夢の「お父さんタイム」も夢でしかなかった。