3割引きで買った山崎製パン「ダブルソフト」にカビを生やしてしまった。
「ダブルソフト」と言えば、我が家のような「節約階級」にとっては「プチ高級路線」だ。せっかく手に入れた高嶺の花をダメにしたのだから、情けない話だ。
カビが生えた場所は白い部分と耳の境目あたり。
色は、ずんだもちのウグイス色にサザエの肝を混ぜたような緑色だ(お見せできないのが少しだけ残念だが、公序良俗に反する写真は流石に掲載できない)。
原因は分かっている。
まず、消費期限を舐めていたからだ。
「3割引き」シールが貼ってあるということは、買ったその日が消費期限最終日であるケースが多い。
常識的に考えれば、「その日に食べ切れないなら冷凍する」が食品の世界の鉄則だ。
一方、わが家には「消費期限には最低3日間の余裕がある」という鉄則がある。
「夏も終わったんだし、そう安易に冷凍庫は使わせませんよ。特売で買った精肉や冷凍食品という先客がいますよ」という事情があるのだが、わが家の鉄則は食品の世界に負けたのだ。
第二の原因は、子どもたちが敷島製パン「超熟」派だったことだ。
「ダブルソフト」を手に入れた翌日、実は「超熟」も3割引きで手に入れていたのだ。
「超熟」も言わずと知れた「プチ高級路線」。値上げ続きの現代日本で、「節約階級」が買わない選択肢はない。
食品の世界の鉄則に従えば、消費期限の早い「ダブルソフト」を食べてから「超熟」に手を出すのが常識だが、子どもたちは「超熟」を先に食べてしまった。
登校の準備で忙しい子どもたちが「超熟を先に食べないでよ」という親の小言など聞くはずもなく、「ダブルソフト」の消費が遅れてしまったのだ。
第三の原因は、食パンの値上げがえげつないことである。
見切り品でもない限り、それなりの食パンさえも買い難くなりつつあるのだ。
NHKによると、大手3社では7月から最大12%値上げされたらしいが、確かにスーパーで以前は「100~120円」程度で買えていた食パン(「ロイヤルブレッド」「ふんわり食パン」などオーソドックス路線)が、最近は「130~150円」クラスに突入している感がある。
「150円」前後となると、従来なら「ダブルソフト」や「超熟」などプチ高級路線の領域だ。
ロシアによるウクライナ侵攻や円安などの影響であることは理解しているが、毎日のことなので家計には厳しい。
対策として「節約階級」の味方であるトップバリュを試した。
が、残念ながら大手の食パンに比べると味は劣っていた。「ダブルソフト」と「超熟」の味の違いを見極める子どもたちの舌は騙せない。
「ねえ、おいしい食パンが食べたいよお」。育ち盛りの声は無視できないのだ。
そうなると、特売の日にオーソドックス路線を確保し、特売のない日はトップバリュで誤魔化しつつ、プチ高級路線に割引シールがあった日にゃあ迷わず鷲づかみする―。
こんな感じのローテーションを構築しないと、家計と子どもたちの好みが両立しないのである。
ちなみに、カビが生えた「ダブルソフト」については、「節約大臣」こと妻が「サザエの肝」の部分を慎重に取り除き、たいらげた。
トースターで焦げ目をつけ、「よし、食える」と拳を握りしめる愛妻の姿を目の当たりにした夫は、「これは日本の縮図かもしれないな」と腕を組み、目を潤ませた。「これは涙じゃない。目にごみが入っただけだい。いや、パンくずが入っただけだい」と強がっていた。
わが家は日本の縮図、という仮説。折しも10月23日、臨時国会が開会した。
このブログで、物価高騰と増税地獄のあおりで「節約階級」宣言をぶち上げたのが10月10日。
節約のため割引シールを求めてさまよう傾向を「見切り品ホリック」と名付けたのが10月20日。
臨時国会では、岸田大先生が所信表明演説で「経済、経済、経済」と連呼したらしいが、臨時国会が閉会するころ、「日本の縮図」たるわが家がさらなる物価高騰でさらに縮まなければいいなあと願うばかりである。