【新型コロナと比較】インフルエンザ後遺症の話【マンフル】

夫がインフルエンザに感染した時の話。

 

熱は40度近くまで上がり、勤め先は出勤停止になり、家庭人としても社会人としても使い物にならなくなったのに、本人はなぜか「待ってました!」とガッツポーズをしていた。

 

休みが増えたのがうれしいのかと尋ねると、「インフルエンザの後遺症を自覚できる時がようやく訪れたんだよ!」とニヤニヤしている。

 

妻が目を白黒させていると、夫は「じゃあ聞くけどね、一般人はこれまでインフルエンザの後遺症に目を向けてきただろうか?」と力説する。

 

夫の言い分をまとめると、「新型コロナの感染対策に力を入れた理由は、ただでさえ不足・偏在している医療資源がパンクするのを防ぐためだけど、後遺症の恐ろしさも大きい。ウイルスの毒性が弱まってからは、特にそうだったよね」ということらしい。

 

後遺症の概要について、厚生労働省のホームページで改めて確認すると、

 

www.mhlw.go.jp

 

代表的な罹患後症状は、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などがあります。また、罹患後症状は、罹患してすぐの時期から持続する症状、回復した後に新たに出現する症状、症状が消失した後に再び生じる症状の全般をさしています。

 

「しかし、だよ」と夫。「新型コロナの後遺症に恐怖を感じたのは、インフルエンザの後遺症に無自覚だったからではないかね。幸か不幸か、僕は以前、新型コロナに感染したじゃん。解熱後も1カ月ぐらい、のどのイガイガ、痰が絡んだような違和感が続いたよね。あの時、思ったのさ。インフルエンザでも後遺症があるのではないかって。自覚的な新型コロナと無自覚的なインフルエンザ。両方感染しないと比較はできないと、あの時思ったわけさ」というのが言い分らしい。

 

夫は人生で1~2回しかインフルエンザにかかったことがないらしく、今回は約30年ぶりの罹患だという。

 

妻は「あなた、長々と話しているけどさ、肝心の後遺症はどうなのよ?」と質問した。

 

夫は「ようやく核心に迫ってきたね」と無駄口をたたきつつ、「のどの違和感は新型コロナウイルスとほぼ同じ症状。だけどね、インフルエンザには偏頭痛があるんだよ。椅子から立つ時とかにコメカミとその周辺が『キーン』と痛む。二日酔いに似ているかな。これは新型コロナではなかった症状だね。これは新しい発見だよ」と明かした。

 

妻は「まあ、新型コロナ以前は後遺症を意識していなかったという指摘は当たっていると思うけど、インフルエンザにも後遺症は『そりゃあ、あるでしょう』ぐらいにしか私には思えないけどね」と突き放した。

 

「インフルエンザの後遺症をあなたが新発見と言うのなら、私もあなたに新発見を教えてあげるよ」と妻は続け、「それはね、あなたはずっと『マンフル』に罹っているのよ」と突きつけた。

 

目を白黒させるのは夫の番だった。

 

妻が「『マンフル』ってのはね、『男ってやつはささいな体調不良で大騒ぎしがち』ってことよ。インフルエンザに罹ったら頭痛が続くこともあるでしょう。インフルエンザじゃなくても頭が痛いことだってあるんだから。『妻が熱があるって言うと、夫は37度台なのに、おれも熱があるって騒ぐ』。これが『マンフル』よ。ていうか、あなたなんか36.8度でも『平熱超えた!』って騒いでいるじゃない。まったく大した逸材だよ」とまくしたてた。

 

夫は「ほほう、そうきたか」という表情で「男と女で分ける時代じゃないんじゃなかったの? 昭和生まれの悪い癖が出たねえ」とにやついてきたので、妻はピシャリと言い返した。

 

「『マンフル』ってのはね、21世紀にイギリスで生まれた言葉だよ!」

 

欧米かぶれの夫は何も言い返せなかった。