「ちょっと、あんた、この部屋に何かいるんだけど…」
昨夜は仕事で遅かった夫の朝は、妻の不穏な一言で始まりました。
「窓のあたりがガサガサなってて…」
子どもたちも駆けつけてきて、口々に訴えます。
「そう、なんかいるんだよ!たまに、ガサガサって!」
夫はふんふんとうなずきながら、腕を組み心の中でつぶやきました。
「サスペンスドラマ好きのやつらは、これだから、まったく…」
夫はため息をつき、種明かしを始めました。
「それはたぶんセミじゃないかな。昨夜、洗濯ものを取り込んだんだよ。乾きは甘かったけど、雨の予報だったんでね。(はき出し)窓から庭に出る時、足元で何かが動き、部屋の中に入ったんだよ。夜中だったんで『なになに?』って探したら、天井の照明にセミが止まっててね。で、セミはどこにいるの?」
妻子の腕は腰高窓あたりを示しました。
夫が窓に近づき、桟をギコギコやると、内窓と外窓の間にはまさに息絶えようとしているセミが。
昆虫は愛しているけど少し苦手な夫が右手の中指でつんとやると、セミは元気に庭へ飛んでいきました。
安堵の表情を浮かべる妻子に夫は深刻そうに打ち明けました。
「いやあ、昨日は大変だったよ。セミが照明にずっと止まってて、ガサガサがずっと続いてね。『ブログを書くことに行き詰まった話』を出した後だったから、別のジャンルの記事を書こうとしていたのに、セミが気になってねえ。照明を暗くしても、脚立に乗っておびき出そうとしても、どうにもならないんだよ。逆に何もせずに窓を開けて自然に出ていくのを待ってたら、別のセミが入ってくるかもしれないだろ?まったく、ブログどころじゃなかったよ。集中力が削がれて削がれて、書けやしなかったよ。あ、これも、ブログに行き詰まった話だよね。あ、これも書いちゃおうかな」
「それは書かなくてもいいんじゃない。ってか、蚊や蠅ならまだしも、セミなんて大きなのが侵入したんなら先に言っておいてよ」
妻の回答に反し、夫が「やっぱり、いっそ書いちゃおう」と言ったから、きょう9月10日は我が家のブログ記念日です。
というわけで、以前、書くことに行き詰った話を書いたら少しだけ好評だったので、
この流れに逆らうまいと第2弾を書いてみました。